このページは番組審議会の主な発言内容をまとめたものです。

開 催 日
令和4年2月2日(水) 第658回
開催場所
熊本放送 会議室
出席委員
新型コロナウイルス感染防止のため、書面審議により実施
議   題
ラジオ番組 「水俣第三中学校 還暦同窓会」


ラジオ番組について 

ラジオ番組 「水俣第三中学校 還暦同窓会」
放送:11月28日(日)19:00〜20:00
水俣病をテーマにしたラジオドラマ。2011年に閉校した水俣第三中学校の卒業生を主人公に、差別や確執と向き合いながら生きる人々を描いた。

委員の発言

◎水俣病と差別という大変重たいテーマを企業や被害者という直接関わりのある人々からの視点ではなく、水俣に住んだ、あるいは住んでいる一般市民の立場からその苦しみや悩みを浮き彫りにし、将来への希望の光も示唆した素晴らしいラジオドラマだった

◎特に、脚本の素晴らしさに感動した

◎楽しく過ごした中学生時代の思い出の曲、カーペンターズの『yesterday once more』を取り入れることで、ただ辛い過去を振り返るだけでなく、あの楽しかった時代を思い出し、楽しいこともあった故郷『水俣』を表しているように感じられた

◎自分の過去を見つめて、当時は幼くて理解出来なかったことや、知らなかったことを懐かしい友人達と過ごすことで、振り返り返って、新たな気持ちで故郷『水俣』に思いを馳せ、家族との新しい絆ができていくストーリーは明るい気持ちで聴き終わることができた

◎大きな災害とともにある人生において(水俣病に限らず、天災も近年多々ある)、長い時間が経過して、ようやくたどり着ける和解もあるという結末は、長く生きることの意味、励ましの意味を大いに含んだ、良質なフィクションと感じた

◎善と悪が混在しながら、混沌とした差別の連鎖に苦しんできた家族、市民、地域の葛藤が、フィクションを上手に用いて、丁寧に描かれていた。分断を、風評被害を乗り越えようと奮闘する市民の姿、水俣病の呼称問題など、現代の課題もうまくストーリーに盛り込まれており、水俣病がまだ終わっていないとのメッセージが強く伝わってきた

◎ラジオドラマを久しぶりに聴いたが、耳だけを澄まして言葉や音楽に集中しながら、水俣の綺麗な海や街並みなど想像を膨らませて聴くことが出来て、とても新鮮な感じで最後まで楽しめた。インターネットや動画が盛んになっても充実した内容のラジオドラマであれば、今後も生き残って行くのではないかと思った

◎番組冒頭での肥薩おれんじ鉄道の列車が鉄橋を渡る音、水俣駅での構内放送などがとてもリアルで臨場感があり、番組の終わりも鉄橋を渡る音で終了となり、音響効果も印象的だった

◎内容も非常に分かりやすく聞き取りやすいため、水俣病を風化させないよう次世代に残していくためにも、ぜひ学校などの教育の場でも活用してほしい番組であった

◎最後に、水俣での周りの人々とのかかわりの中で、幸子が水俣に心を開いてく様子が、一時間をたっぷり使って違和感なく理解できるように描かれており大変良かった。このような水俣をめぐる状況は、経験した人しか分からないことも多いと思うが、長く、出来るだけ広く様々な形で伝えていくことが大切だと痛感した

◎フィクションと謳ってはあるが、事実に裏付けされた作品ほど人の心を打つものはないと感じた


会社の発言

○放送の前年は水俣病の公式確認から65年の節目だった。60年の時には1時間のテレビ特別番組を制作・放送したが、今回ラジオで何かできないかと思っていたところ、OBの村上雅通氏からラジオドラマというアイデアをもらい、制作に至った。

○これまでのテレビ取材でも身に染みて感じていたが、水俣病事件の取材で最初にぶち当たる壁が“取材拒否”。取材対象者の家に何度も通い、やっと話を聞かせてもらえても、カメラ取材を申し込むと断られる。しかし、撮影できなかった人の証言には、水俣病問題の核心ともいえる“お宝”がたくさんある。ですから、テレビドキュメンタリーでは伝えることができなかった“お宝“をフィクションとしてラジオドラマでなら伝えることができるという村上氏の話から、脚本を書いてもらうことになった。

○可能な限り実音を使った。肥薩おれんじ鉄道の車内や駅のアナウンス、ストーリーで重要な役割を果たす鉄橋の音は場所を変えていくつも録った。シラス漁にも同行させてもらい、波をきる音や巻き上げ機の音、潮騒や漁船の音。寺の読経。ほとんどの音素材も“水俣産”。

<番組審議会事務局>

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